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消防士の働き方は、一般のサラリーマンとは異なり、勤務パターンにもいくつかの種類があります。
特殊な形態なのでわかり辛い部分もあるかもしれませんが、一度理解してしまえば難しい話ではありません。
ここでは、消防士の「勤務形態」「勤務時間」「休日制度」「1日の仕事の流れ」についてくわしく書いていきたいと思います。
これから消防士を目指す方は、参考にしてみてくださいね。
記事の目次
勤務時間と形態は?
消防士の勤務形態は、地域や消防本部によっても異なります。
代表的なものは、朝から夕方まで勤務する「毎日勤務制」、交代で24時間勤務する「2交代(隅日勤務)制」「3交代(3部勤務)制」の3つのパターンです。
なお24時間勤務というのは、正確には「24時間拘束の16時間勤務」の意味。24時間は消防署でいつでも出動できる準備はしているものの、実際に働いてる時間は食事休憩(45分×2回)と仮眠(6時間30分)を除いた16時間になります。
毎日勤務制
毎日勤務制は、主に「署長」「副署長」「本部職員」「予防課」で働くスタッフ。ほかにも、「本庁」「消防本部」「消防学校」「研究所」で管理・教育・研究業務に携わる内勤職員向けの勤務体制です。
一般会社員と同じように、月曜から金曜まで毎日出勤し、午前8時30分から午後5時15分まで働きます。
2交代(隅日勤務)制
「ポンプ隊」「救急隊」「特別救助隊」のいずれかに所属する大半の消防士は、24時間勤務の2交代(隅日勤務)制になります。
班を2つに分け、一班と二班で丸一日ごと交互に勤務をします。当番日は、午前8時30分から翌朝の8時30分まで。
「当番 → 非番 → 当番 → 非番」を繰り返し、3回勤務すると4回目が休日になります。
3交代(3部勤務)制
3交代(3部勤務)制は、東京消防庁など大都市の消防本部で採用されています。全国807消防本部のうち、3交代制を導入しているのは約4分の1程度です。
班を3つに分け、3つの班が交代で勤務をします。当番日は、午前8時30分から翌朝の8時30分まで。
「当番 → 非番 → 週休 → 当番 → 非番 → 週休」を繰り返し、数サイクルに1回は事務処理をおこなう日勤日が入ります。休日は、班単位で交互に設定されており、3週間で1サイクルになるように調整されるのが一般的です。
なお、2交代制・3交代制ともに1週間の平均勤務時間は約40時間(4週8休)でほぼ変わりありません。
非番と週休の違いとは?
非番も週休も、特に過ごし方が変わるわけではないので同じ休みと考えてしまいがちです。しかし、非番はあくまで24時間勤務後の「明けの日」。厳密にいえば休みではありません。
例えば、非番日に火事が多発した場合や大災害といった非常事態が発生した場合、突然現場に呼び出されるケースもまれにあります。そのため、自治体の中には飲酒制限を設けているところもあります。
ほかにも、事務処理が残っていて早急に片付けなければいけない時など、昼近くまで残業するケースもあります。
このような理由から、非番といえども非常時に備えて遠出はNG。自宅や署の近くで過ごしたり、もし旅行などで遠出をする際は事前に届出を出して「自分の所在をはっきりさせておく」必要があるのです。
仕事の1日の流れとスケジュール
消防署は365日24時間、市民からの119番通報に対応しており、多くの消防士は24時間の交代勤務制で働いています。
ここでは、消防士の”とある1日の流れ”についてお伝えしたいと思います。
AM8:30〜
消防士の1日は、前日勤務していた隊員との交代業務でスタートします。署内の車庫前、または事務所内に整列して前日の申し送り事項の引き継ぎを受けて勤務を交代します。
その後、最初におこなうのは車両と各種消防機器の点検業務です。火災が発生し現場に駆けつけた際に、機材が壊れていて「動きませんでした…」では済まされません。常に万全な状態にしておく必要があります。
車のウィンカーやサイレンの作動点検をはじめ、車載の照明器具やエンジンカッターなどさまざまな道具を実際に動かしてみて、正常に作動するかを確認します。
これらの点検を一通り終えると、次に火災現場を想定した出動演習がはじまります。隊のフォーメーションや動きを確認したり、はしご車のはしごを伸ばしてみて異常が無いかも入念にチェックします。
特に問題がなければ、隊員は事務所に戻ってミーティングをおこない、その日の予定や注意事項を確認しあいます。
AM10:00〜
午前中は、事務処理などのデスクワークが中心です。事務処理のほとんどは、災害出動時の報告書の作成で、これは消防士にとって重要な仕事の1つになります。
それぞれの隊員が、各自の視点で細かく記述することで、今後の消火活動や災害予防の改善に役立てられます。
PM1:00〜
特に災害が発生しなければ、昼食をはさみ午後の部がスタートします。午後は午前中のデスクワークと打って変わって、体力トレーニングや訓練が中心になります。
当然ですが、訓練で出来ないことを現場に出てできるはずがありません。訓練といえども、リアルな現場をイメージしながら真剣におこなわれます。
また日によっては、署外活動として街で消火栓を点検する「水利調査」や、建物の消火器や火災報知機の設置状況を調べる「査察」に出かけることもあります。外出する時は、いつ出動命令が出されても迅速に対応できるように、3〜5人で一組になって消防車で移動をします。
PM6:00〜
夜にも車両と機材の点検をおこない、ミーティングをおこないます。それから夕食をとり、ふたたび事務処理をおこなったり、署内のトレーニングルームで体を鍛えたり、昇格試験の勉強をしたりする人もいます。
シャワーも、この時間帯に順番で入ります。22時以降は仮眠もできますが、交代でひとり約2時間ずつ通信業務と受付け対応をおこなわなければいけません。
ちなみに、消防士は仮眠中でも指令が出たら飛び起きて即出動できるように、パジャマには着替えず出動用の服装のまま横になります。
AM6:00〜
翌日の起床は朝6時。署内を清掃したり、車両の洗車をしたり…。人や車が少ない早朝でなければ確認できない場所の「水利調査」をおこなったりします。
そして、だいたい7時頃には朝食を済ませ、あとは出勤してきた隊員と勤務を交代して8時30分頃に業務終了です。
これはあくまで、災害がなかった場合の消防署の1日。当然ですが、出動の指令が入った場合は、仮眠中や入浴中、食事中であってもすぐに出動しなければいけません。
ここまで、ズラズラと文章で書いてきましたが、実際の映像で見ていただくのが一番早いと思います。以下は、富士市中央消防署の1日をまとめたものです。興味のある方は、合わせて参考にしてください。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、消防士の日常と勤務形態についてくわしくお伝えしました。休みの多いイメージのある消防士ですが、1回の勤務で働く時間が16時間、通常の会社員の約2日分になります。
少々特殊な勤務パターンなので、最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、慣れてくれば待遇にも恵まれた働きがいのある職場だと思います。
また、ここでは書き切れなかったもっと具体的な仕事内容については、こちらの記事で書いています。
さらに、消防士になるための方法やルートについては、こちらの記事で書いています。これから消防士を目指す方は、参考にしてみてくださいね。