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消防組織にも、警察や自衛官と同じように階級制度があることをご存知でしょうか?
消防職員として採用されると、まずは「消防士」としてスタートし、「消防副士長」「消防士長」「消防司令補」「消防司令」「消防司令長」「消防監」「消防正監」「消防司監」「消防総監」と1つずつステップアップしていきます。
ここでは、「消防組織の概要」「階級制度の仕組み」「階級ごとの年収の違い」についてくわしく書いていきたいと思います。
記事の目次
消防ってどんな組織?
基本的に、消防は市町村ごとに組織されています。消防本部の下に消防署があり、カバーするエリアが広範囲な地域のみ出張所が配置されます。
例えるなら、一般企業の本社にあたるのが消防本部。支社や販売店にあたる実働的な役割を担うのが消防署や出張所になります。
そして、消防署の下には総務・警防・予防の3課があります。さらに、総務課は管理係と経理係、警防課は防災安全・消防・機械装備・救急係、予防課は防火管理・査察・予防・危険物係に分かれています。
平成28年4月1日時点で、全国には802の消防本部があり、そのもとに1,716の消防署が設置され、消防職員は約16万人にのぼります。
階級制度はどうなっている?
大規模な消防組織を円滑に運営していくために、消防職員は10段階の階級に分けられています。これは一般企業の役職制度にあたるもので、階級によって就くことのできる役職が決まります。
消防総監
東京消防庁の長であり、消防官の中で最上位の階級になります。
日本で唯一、1人しか持てない階級ですが、この役職は東京消防庁のみで使用されているものです。東京以外の消防本部に対する権限はありません。
東京消防庁に所属する職員の中から選定され、推定月収は70〜125万円ほど。年収に換算すると1,500万円前後になります。
消防司監
政令指定都市(人口50万人を超える都市)の消防本部の消防長、または東京消防庁の次長・部長に与えられる階級になります。
政令指定都市では、消防司監が最高位。現場に出動することはなく、本部で指揮を取ります。
推定月収は50〜65万円ほどで、年収に換算すると800〜1,000万円前後になります。
消防正監
消防職員の数が200人以上、または人口30万人以上の”政令指定都市ではない”市町村の消防長に与えられる階級です。
ほかにも、東京消防庁の消防学校長、消防化学研究所の所長・部長、消防本部(政令指定都市)の理事・次長・部長がこの階級にあたります。
「消防司監」同様、現場には出動せず本部で指揮を取ります。推定月収は35〜57万円ほどで、年収に換算すると700万円前後になります。
消防監
消防職員の数が100人以上、または人口10万人以上の市町村の消防長、または署長に与えられる階級です。
消防本部の規模によっては、消防監が最高位となります。ほかにも東京消防庁の署長、消防学校副校長、消防本部(政令指定都市)の部長・参事・課長がこの階級にあたります。
「消防正監」同様、現場には出動せず本部で指揮を取ります。推定月収は30〜55万円ほどで、年収に換算すると600万円前後になります。
消防司令長
消防職員の数が100人未満かつ人口10万人未満の市町村の消防長に与えられる階級です。消防署のすべての隊をまとめる管理職にあたり、署長として働くこともあるリーダー的存在になります。
ほかにも、東京消防庁の課長・室長・装備工場長、消防本部(政令指定都市)の署長・課長・隊長、中核市消防本部の課長や課長補佐 、消防訓練センターの所長がこの階級にあたります。
実際の消火活動や人命救助にあたることは、ほとんどありません。現場では複数の隊をまとめる「統括指揮者的」な役割を担います。
推定月収は30〜50万円ほどで、年収に換算すると500〜600万円前後になります。
消防司令
消防本部(政令指定都市)の副署長や課長補佐クラスに与えられる階級です。いわゆる現場の最高リーダーであり、隊の「大隊長」と呼ばれる人がこれにあたります。
ほかにも、東京消防庁の課長補佐・係長・出張所長が含まれます。
実際の消防活動はおこなわず、災害現場で指揮をとるのが主な任務です。現場での指揮決定権を持ち、最高責任者として任務を遂行します。
現場に出動する分さまざまな手当てが付き、推定月収は26〜48万円ほど。年収に換算すると500〜600万円前後になります。
消防司令補
その名の通り、消防司令を補佐するものに与えられる階級になります。
現場で消防活動(ホースをもって消火するなど)をする中で最上位の階級で、「ポンプ隊」「救急隊」「救助隊」といった各小隊の隊長を務めるのが一般的です。消防本部(政令指定都市)の係長・主査・主任クラス、東京消防庁の主任がこの階級にあたります。
通常、消防士長を数年間務めた後に昇任試験を受けて任命されます。消防士になり順調に昇格していけば、30代後半から40代で就くことが多いです。
推定月収は25〜45万円ほどで、年収に換算すると500万円前後になります。
消防士長
初めて「幹部」と呼ばれるようになるのが消防士長です。消防本部(政令指定都市)の副隊長、消防本部(市町村)の主任、東京消防庁の係員クラスがこの階級にあたります。
「車両長」といって、ポンプ車や救急車など特定車両のリーダーを務めることができ、中には消防司令補と同様、小隊(ポンプ・救急・救助)の隊長に任命される場合も多いです。
消防副士長や消防士から、昇任試験を受けてなるのが一般的。中には、副士長を数年務めることでなることができる消防本部もあります。
20代後半でなるケースが多く、推定月収は22〜40万円ほど。年収に換算すると400〜500万円前後になります。
消防副士長
消防士として数年務め、優秀な成績を収めて出世をすると与えられる階級です。
消防士の中では”先輩的”な存在になりますが、現場で指揮・指導をする権限は持ちません。地域によっては消防士の一部とみなされ、正式な階級として扱われない場合もあります。
推定月収は20〜40万円ほどで、年収に換算すると300万円前後になります。
消防士
一般的に「消防士」「消防隊員」と呼ばれ、採用後に1番最初に与えられる階級です。学歴・経歴問わず、まずは皆ここからスタートします。
火災や災害が起こった際に、真っ先に現場へ出動し、最前線で消火活動や人命救助にあたる存在です。
推定月収は20〜37万円ほどで、年収に換算すると300万円前後になります。
階級の上がる仕組みはどうなっている?
管理職以外
消防職員の階級は、ただ長年務め続ければ自動的に上がっていくものではありません。
地域によってもその方法は異なりますが、通常は昇任試験を受けて階級が上がる「昇任試験制」が採用されているところがほとんどです。
昇任試験の受験資格には、「◯年以上の勤務実績を有するもの」といった勤続年数や勤務経験が階級ごとに定められています。
試験では、筆記試験や実技試験、そしてその階級にふさわしい人物かどうかを見極める面接試験がおこなわれます。
管理職クラスの場合
管理職クラスである消防司令長以上になると、点数を競う一般的な試験はおこなわれません。年齢と勤続年数に実績を加味した「選考制」によって決まる自治体がほとんどです。
ただし一部例外もあり、東京消防庁をはじめとした一部の地域では、「選考制」ではなく「昇任試験制」を設けている場合もあります。
これから消防士を目指す方は、事前に自分の志望する自治体の制度をよく確認しておくとよいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は、消防士の階級制度とそれぞれの役割についてお伝えしました。
消防士は、市民の命や安全を守る誇り高き仕事である反面、時に自分の身が危険にさらされるリスクも伴います。
そこで、上の階級のものが下のものに適切な指示を与える構図を徹底することで、現場における協力体制をより盤石なものにしているのです。
また、当ページでは階級ごとの年収をざっくりと書きましたが、こちらのページで基本給にプラスされる各種手当やボーナス、退職金制度についてくわしくまとめています。興味のある方は目を通してみてください。
さらに、消防士になるための方法やルートについては、こちらの記事でまとめています。検討中の方は参考にしてみてくださいね。