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・消防士の給料ってどれくらい?
・民間企業と比べて高いの?安いの?
・高卒と大卒で給料は違う?
・退職金はどれくらい貰える?
このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。特にこれから消防士を目指す方にとって、とても気になる部分だと思います。
当記事では、消防士の年代・地域・階級別の給与額、各種手当、福利厚生制度についてまとめています。
「どこよりも、詳しく!」をモットーに書きました。参考にしてみてくださいね。
記事の目次
初任給の全国平均は20万円!
消防士の仕事は、一般的な公務員に比べて危険性が高く、勤務体系も特殊です。
そのため、特別給料表「公安職俸給表(一)」が適用されており、普通の公務員よりも約12%ほど高い給与をもらっています。
初任給は、大学卒で20万円前後になります。
都市別の初任給(大学卒程度)
消防士は地方公務員なので、給料の額は地域ごとに異なります。政令指定都市(人口50万人以上)などの初任給は以下のとおり。
都市名 | 初任給 |
東京都 | 約247,000円 |
札幌市 | 約187,769円 |
仙台市 | 約193,600円 |
埼玉市 | 約200,480円 |
千葉市 | 約204,351円 |
横浜市 | 約209,813円 |
川崎市 | 約218,624円 |
相模原市 | 約204,500円 |
新潟市 | 約204,525円 |
静岡市 | 約190,906円 |
浜松市 | 約188,000円 |
名古屋市 | 約199,300円 |
京都市 | 約210,980円 |
大阪市 | 約204,187円 |
堺市 | 約210,000円 |
神戸市 | 約199,300円 |
岡山市 | 約195,900円 |
広島市 | 約200,400円 |
北九州市 | 約193,000円 |
福岡市 | 約204,000円 |
熊本市 | 約193,900円 |
※平成28年データ
年収の全国平均は718万円!
消防士の30代の平均手取り年収は約600万、40代は約720万、50代は約800万以上と、民間企業の平均と比べて高くなっています。さらに、退職金は平均2,500万円前後。非常に安定しているといえるでしょう。
地域・年代別の年収額
都道府県や政令指定都市、市町村別の年収は以下のとおりです。(地方公務員給与実態調査結果)
年齢 | 都道府県 | 東京都 | 政令指定都市 | 町村 |
18〜19歳 | 247.6万円 | 286.2万円 | 248.7万円 | 233.6万円 |
20〜23歳 | 283.9万円 | 324.0万円 | 281.6万円 | 269.2万円 |
24〜27歳 | 328.2万円 | 362.0万円 | 329.2万円 | 314.7万円 |
28〜31歳 | 383.1万円 | 405.9万円 | 387.1万円 | 364.3万円 |
32〜35歳 | 443.8万円 | 472.2万円 | 456.2万円 | 426.7万円 |
36〜39歳 | 500.7万円 | 537.2万円 | 517.8万円 | 478.9万円 |
40〜43歳 | 564.8万円 | 598.8万円 | 580.7万円 | 536.1万円 |
44〜47歳 | 609.1万円 | 637.6万円 | 618.2万円 | 575.4万円 |
48〜51歳 | 642.8万円 | 661.0万円 | 649.4万円 | 617.6万円 |
52〜55歳 | 670.7万円 | 679.1万円 | 675.4万円 | 637.2万円 |
56〜59歳 | 695.1万円 | 695.4万円 | 697.4万円 | 668.5万円 |
平均月額給与 | 32.9万円 | 34.8万円 | 33.9万円 | 31.3万円 |
※このほかに、期末手当・超過勤務手当・扶養手当・住居手当・通勤手当などが条件に応じて支給されます。
高卒と大卒でも給料が変わる?
消防に限らず、すべての公務員試験において、採用区分は専門系・Ⅰ類(上級)・Ⅱ類(中級)・Ⅲ類(初級)の4つに分かれています。それぞれ試験の難易度が異なり、どの区分で採用されるかによって給与も変わります。
専門系は、大学卒で法律・電気・物理などの履修者を対象とする試験。Ⅰ類(上級)は大学卒業程度、Ⅱ類(中級)は短大卒業程度、Ⅲ類(初級)は高校卒業程度の学力を有した人を対象とする試験です。
ただし、この分類はあくまで試験の難易度を示すもの。最終学歴が高卒でⅠ類(上級)を受験しても良いし、逆に大卒でⅢ類(初級)を受験することも可能です。
採用区分ごとの給与一覧
東京消防庁を例にとると、採用区分ごとの初任給の違いは以下のとおりです。(平成27年4月1日現在)
採用区分 | 初任給 | 期末・勤勉手当 |
専門系 | 約252,000円 | 98万円 |
Ⅰ類 | 約247,000円 | 94万円 |
Ⅱ類 | 約231,000円 | 87万円 |
Ⅲ類 | 約212,000円 | 80万円 |
※期末・勤勉手当は、一般企業でいうところの賞与(ボーナス)。給与とは別に年2回支払われます。このほか、超過勤務手当・扶養手当・住居手当・通勤手当などが条件に応じて支給されます。
階級によっても給料が変わる?
消防組織にも、警察や自衛官と同じように階級制度があり、階級によっても給与が変わります。
採用されると、まずは「消防士」としてスタートし、「消防副士長」「消防士長」「消防司令補」「消防司令」「消防司令長」「消防監」「消防正監」「消防司監」「消防総監」と1つずつステップアップしていきます。
昇級の方法は、地域によっても異なりますが、通常は試験に合格して階級が上がる「昇任試験制」。試験は、一定の勤務年数を経て、受験資格を満たせば誰でも受験ができます。
また、「階級制度の仕組み」「階級ごとの年収の違い」については、こちらの記事でもくわしく書いています。あわせて参考にしてみてください。
消防士の階級別給与
階級ごとの給与の目安は以下のとおりです。
階級 | 月収(推定) | 年収(推定) |
消防士 | 20〜37万円 | 約300万円 |
消防副士長 | 20〜40万円 | 約300万円 |
消防士長 | 22〜40万円 | 約400〜500万円 |
消防司令補 | 25〜45万円 | 約500万円 |
消防司令 | 26〜48万円 | 約500〜600万円 |
消防司令長 | 30〜50万円 | 約500〜600万円 |
消防監 | 30〜55万円 | 約600万円 |
消防正監 | 35〜57万円 | 約700万円 |
消防司監 | 50〜65万円 | 約800〜1,000万円 |
消防総監 | 70〜125万円 | 約1,500万円 |
各種手当について
先にも書きましたが、消防士の場合、職務の特殊性や危険性などが考慮され、市役所などでデスクワークをする一般公務員よりも、給与の面で優遇されているケースが多いです。
消防士と一般公務員、どちらにも共通して支給されるのが、「調整手当」「就業手当」「超過勤務手当」「住居手当」「扶養手当」「通勤手当」「期末手当」など。退職する際は、「退職手当」と「退職年金」を受け取ることができます。
さらに消防の場合、これに加えて「特殊勤務手当」が付きます。これは、「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務」に対して支払われるものです。
たとえば、火災出動した際には、1回につき300円程度がもらえます。機関員や救急救命士の場合は、さらに100〜200円ほどがプラスされます。
また消防隊員は24時間勤務の交替制なので、「夜勤手当」の加算もあります。ほかにも「潜水業務(水難救助など)」や「緊急消防援助隊」として派遣された場合は、別枠で手当が支給されます。
とは言っても、現在はどこの都市も財政難。給料のベースカットや特殊勤務手当の廃止を進めている地域も少なくありません。
地域ごとの細かい給与体系を知りたい方は、自分が受験予定の自治体に直接問い合わせてみるとよいでしょう。
特殊勤務手当の例
職員 | 出場 | 金額 |
1.救急業務に従事した職員 | ||
(1)救急救命士 | 1回 | 500円 |
(2)機関員 | 1回 | 400円 |
(3)(1)および(2)以外の職員 | 1回 | 300円 |
2.救助業務に従事した職員 | ||
(1)機関員 | 1回 | 400円 |
(2)(1)以外の職員 | 1回 | 300円 |
3.火災出動業務に従事した職員 | ||
(1)機関員 | 1回 | 400円 |
(2)(1)以外の職員 | 1回 | 300円 |
4.潜水業務に従事した職員 | 1回 | 1,000円 |
5.緊急消防援助隊として従事した職員 | 1回 | 1,680円 |
6.夜間勤務に従事した職員 | 1回 | 410円 |
福利厚生が充実している
住居
「職員待機宿舎」と呼ばれる住居が全国各地にあります。これは「震災時の大規模災害発生時における人的消防力の確保を図る」という目的でつくられ、消防士であれば誰でも無料で利用できます。
東京消防庁では、都内に「単身用宿舎」が約70ヶ所、「家族用宿舎」が約160ヶ所あります。ちなみに東京消防庁では、消防学校を卒業後、一年間は「単身用宿舎」で生活する決まりになっています。
さらに、マイホームを購入する場合は、「共済組合」や「消防信用組合」などから低金利で借入れも可能。家賃のかからない宿舎でコツコツとお金を貯めて、マイホームの購入資金に充てる人も少なくありません。
また当然ですが、勤務時に着用する制服・制帽・靴・靴下・ワイシャツ・ネクタイ・手袋などもすべて支給されます。
健康管理
危険の溢れた現場で働く消防士。管理者側は、隊員一人ひとりの健康管理はもちろん、業務中に負傷をした際の治療対策にも力を入れています。
東京消防庁を例にとると、本庁の健康管理室は、いわば全職員の”ホームドクター”的な存在。「胸部検診」「循環器検診」「消化器検診」などを定期的におこない、さらに潜水業務や航空業務といった特殊な任務につく隊員には「特別健康診断」を実施しています。
また、更生施設も充実しています。消防職員と家族のためのコミュニケーション会館、各地の保養所、スポーツ施設などもすべて無料で利用ができます。
クラブ活動や年間行事
職員同士が親睦を深めたり情報交換をおこなう場として、クラブ活動や年間行事も積極的におこなわれています。
東京消防庁では、野球・剣道・バスケ・サッカーなどの体育部会、書道・囲碁・釣り・写真のほか「防災研究会」や「救助救急研究会」といった文化部会、あわせて50近くのクラブが活動しています。
まとめ
いかがでしたか。今回は、消防士の給料事情についてくわしく書きました。
平均年収 718万円。これを多いと見るか、少ないと見るか。捉え方は人それぞれですが、公務員である消防士は、一般企業に比べて安定しているということをご理解いただけたでしょうか。
ただし、待遇面では比較的恵まれた職業ですが、多くの職員は、お金のためだけではなく「人を助けたい」という熱い想いを持って職務についています。
お金以上に、自分の町を自分の手で守る責任感、仕事を通じて得られる達成感は何事にも代えがたいものになるでしょう。
ほかにも、これから消防士を目指す方向けに、なるためのルートや試験の詳細についてこちらの記事でまとめています。
また消防士の職種・業種・配属先については、こちらの記事でまとめています。興味のある方は、参考にしてみてください。